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生命科学者からみた「サムシング・グレート」の世界 村上和雄 連載 ⑩

  • 執筆者の写真: 心と遺伝子アカデミー
    心と遺伝子アカデミー
  • 7月3日
  • 読了時間: 2分

3章 遺伝子と魂の関係


2.魂とサムシング・グレートの関係


 私の現在の研究のテーマは、心の働きによって遺伝子のスイッチがオン・オフになることの実証だ。つまり、心の働きには、限りない可能性があることを、遺伝子の分野から追求することだ。アル症について言えば、遺伝的要因に勝る心の働きとは何かを探ることにある。


 先に述べたように、アル症からの回復は、その精神依存度からして非常に困難とされる。たとえ断酒の誓いを立て、長く禁酒を続けても、たった一杯の酒を口にしただけで、元の木阿弥になることは、よく知られている。

 ゆえに、断酒会に参加するなどして、酒を断つ意思を生涯持ち続けるよう、心がけることが求められる。


 そのような自助グループの一つにAA(アルコーホリクス・アノニマス=無名のアルコール依存症たち)がある。このグループでは、広い意味での宗教的なアプローチを、依存症からの回復に役立てている。

 

 AAでは、依存症はスピリチュアルな病、魂の病と定義している。霊的に健康であることとは、人間を超えて「大いなる存在」と、きちんと繋がっている状態を意味する。

 ひとたび依存症になると、そういう存在との繋がりを実感できなくなり、アルコールとの関係が最も緊密な状態に陥ってしまう。それゆえに、人と一緒にいても孤独を感じ、コミュニケーション技術の低下によって人間関係も悪化し、正直さを失い、信じる力も弱くなり、価値観も歪んでいく。


 このように、飲酒に伴う心・身体レベルの問題以外にも、魂のレベルにおいて病んでいくと考えられているのだ。そのため、依存症から真に回復するには、12の段階を踏んで「大いなる存在」へと近づく生活を、心がけることが大切とされる。

 

 これらの段階について、AAの設立には精神分析学のC・G・ユングがかかわっている。ユングは、重いアル症でAA設立者になった人物にこういっている。

「あなたは医術や精神医療ではどうにもならない。霊的な、あるいは宗教的な体験をすれば、つまり真の転換を体験すれば、回復可能かもしれない」と。

 また、のちにAAの会長となった人物には、次のように述べている。

「彼のアルコールへの渇望は、ある霊的な渇きの低い水準の表現であった。その渇きとは、我々の存在の一体性に対する渇きであり、…略…神との一体化ということであった」


 精神分析学の世界から見ても、依存症からの真の回復には、霊的な魂のレベルにおける癒しが必要だということだろう。


出典: Spirituality as a Way: The Wisdom of Japan 2021



 
 
 

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