生命科学者からみた「サムシング・グレート」の世界 村上和雄 連載⑤
- 心と遺伝子アカデミー

- 4月20日
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2章 魂とスピリチュアル
1. 健康とスピリチュアル
「健康ブーム」といわれて久しいが、「いつまでも健康でありたい」とは、現代人に共通した願いだ。そのため、健康増進に効果があるとされる器具や食品などに、飛びつくような風潮が見受けられる。
なぜ、健康ブームが起こったのか。その原因の一つ「病まず、弱らず、元気で長生き」は、古今東西を問わず、人間としての究極の理想なのだろう。
ところで、「健康」の英語healthという言葉はゲルマン語の「完全」という言葉と同じ語源からきている。健康であるためには、あらゆる面で完全であらねばならない。健康ブームのゆえんも、完全な状態を維持したいという潜在的な欲求にほかならないと思われる。
では、あらためて健康とはなんだろうか。1998年のWHO(世界保健機構)執行理事会は、WHO憲章の前文にある「健康の定義」の見直しを討議し、以下のような改定案を議題とした。
「健康とは、完全な肉体的(physical)心理的(mental)、スピリチュアル(spiritual)および社会的(social)福祉のダイナミックな状態であり、単に疾病または病弱の存在しないことではない」。
この案は、緊急に改正する必要なしとして審議が見送られ、事実上の棚上げ状態になっている。
その焦点であるスピリチュアルの意味そのものも、日本ではいまだに統一的な見解がない。
そもそもスピリチュアルなものとは、単なる心ではなく、心と身体をつなぐ人間存在にとって中核的なものを指しており、日本では古来「霊」や「魂」、あるいは「霊魂」と呼ばれてきたものではないかと私は考える。だが、その霊や魂はどのようなものかと問われれば、それを示すことはできない。現代科学をもってしても、明確に説明することは不可能なのだ。
しかし、説明が困難であるにもかかわらず、世界的に見て、霊や魂が確かに存在すると信じる人は少なくない。科学信仰が広がっている先進諸国においても、スピリチュアルなものは幅広い層に支持されている。これは不思議な現象だ。私はそういうものを「魂」と定義して考えを述べる。
出典: Spirituality as a Way: The Wisdom of Japan 2021





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