生命科学者からみた「サムシング・グレート」の世界 村上和雄 連載 ⑦
- 心と遺伝子アカデミー

- 27 分前
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2章 魂とスピリチュアル
3. 「個体の死」と輪廻転生
これを環境学の立場から見れば、人間の生まれ変わりは、地球規模のリサイクルシステムの一部と考えることも可能かもしれない。たとえば、人間が死んで火葬されるとき、身体の炭素元素は酸素と結合して二酸化炭素となり、大気中に放出される。
その際、体重69Kg私の例で言えば、身体からどれくらいの二酸化炭素が発生し、どのように地球に還元されていくのだろうか。安斎育郎氏(2002)によれば、次のようになるのである。
私の身体から発生した二酸化炭素が、地球の大気圏で均一に拡散したとする。すると、地球上のどこにあっても1Lの容積の風船に空気を吹き込んだとき、その中に、私の身体を形づくっていた12万個もの炭素が取り込まれる計算なるのだ。この二酸化炭素は、光合成により、野菜などの生育に利用される。そして、これらの植物を食べる動物や人間の身体に摂取されるのだ。
このように、元素レベルで考えれば、私たちの身体を構成する諸元素は不滅であり、死によって人間をはじめとする生きとし生けるものに生まれ変わる。私たちの命は個体の死とともに終わっても、身体の元素は世界中に広がって生き続けるのだ。
これは、科学的な意味における輪廻転生であると安斎氏はいう。物質レベルの生まれ変わりといっても過言ではないかもしれない。
それでは生物学的な生命を進化の観点から考えてみよう。2000年の科学雑誌「ネイチャー」に驚くべき研究が掲載された。胎盤形成に必須なシンシチンというタンパクが、ヒトのゲノムに潜むウイルスの遺伝子に由来することが発表されたのだ。胎盤の形成にはこの内在性ウイルス遺伝子の発現が必須であり、母体の免疫による攻撃から胎盤内の胎児を保護する免疫抑制機能を生み出したのだ(Mi, et al. 2000)。
哺乳類はこのウイルスの遺伝子を自身のゲノムに取り込むことにより、子孫を胎内で育てることが可能になった。つまり、私たちのゲノムが進化のために突然変異したのではなく、ウイルスと共生することで進化したと考えられるのだ。
ヒトのゲノムの中の1.5%程度が遺伝子であり、その他の非コード領域の約45%がウイルス由来のゲノムだというのは驚きではないか。
私たちはゲノムの中にウイルスを取り込んで共存することにより、現在のヒトとして進化したと言えるのだ。生物進化の過程でミトコンドリアや葉緑体が細胞内で共生を始めたように、複数の生物が「合体」する現象が起こったのだ。
そして、これらのことを地球レベルで考えると、全く別々の存在であったヒトの祖先と、ミトコンドリアやウイルスが出会った時、生き残る戦略として共生する道を選んだといえないだろうか。私たちの生命は他の生命と繋がりながら存在しているのである。そして、このことは、物質としての生命が地球からのレンタルであること、生命のからくりが全ての生き物に共通であることと何の矛盾もないのである。
出典: Spirituality as a Way: The Wisdom of Japan 2021





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