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生命科学者からみた「サムシング・グレート」の世界 村上和雄 連載 ⑮

執筆者の写真: 心と遺伝子アカデミー
心と遺伝子アカデミー
1 日前
読了時間: 3分

4章 祈りと魂


3.     祈りと遺伝子


 現代人は祈りの世界から遠くなりつつあるが、東日本大震災や新型コロナウイルスの脅威に際して、「人々のために祈ろう」という声が世界中で生まれている。

近年、欧米では、祈りと治療効果に関する研究に積極的に乗り出している。まだ、最終結論は出ていないが、私はそのデータを見て、祈りは治療効果があると考えている。


 祈りには一種のエネルギーがあり、このエネルギーが遺伝子のオンとオフに影響を与え、治療効果を上げると考えている。真摯な魂からほとばしり出る祈りは、時間、空間を超えてサムシング・グレートに届くと思われる。そのとき、祈りは凄まじいほどの力を発揮するのではないだろうか。

 

 私たちは心と遺伝子の相互作用研究を一歩進めて、祈りが遺伝子と相互作用する、という新しい仮説に基づいて研究を開始している。

祈りの最初の研究として、同じ修行を終え毎日祈りを行う僧侶と一般の方々との遺伝子のオン・オフや代謝産物の違いを調べてみた。すると、僧侶に特異的に発現する遺伝子や代謝産物が見つかったのだ(Ohnishi, et al. 2017)。


 僧侶型オン遺伝子として見つかったのは、免疫系のI型インターフェロンと関連する遺伝子群だ。I型インターフェロンは抗ウイルス作用(感染防御作用)を引き出すことが知られている。さらに、僧侶のタンパク質代謝が高いレベルにあるという代謝物の特徴から、僧侶群においては自然免疫系が全体に活性化していることが考えられる。


 なぜこのような遺伝子の活性が高いかは明確ではない。興味深いことに、人生に意味を見出し、社会の貢献に喜びを見出す幸福感(ユーダイモニックな幸福感)によって、感染防御に関与する遺伝子群の機能が活性化し、炎症反応に関する遺伝子機能が抑えられることが報告されている(Cole, et al. 2011)。視点は異なるものの、精神的な実践あるいは宗教的実践もまた遺伝子の作用に影響を与えることが証明されつつあるのだ。


 さらに興味深い結果として、共感性と僧侶型遺伝子ならびに僧侶型代謝産物に、一定の関連が見出された。これは僧侶のみならず、一般の方も同様であり、僧侶型遺伝子が共感性と深く関わっていることが推測されるのだ。僧侶における自然免疫系の活性化も、共感を含めた僧侶の高い感受性の表れとして捉えることもできる。つまり、心的な感受性と免疫的感受性に共通の基盤があることが推測され、祈りという所作がそのような身心基盤の成立に関わっていることが考えられるのである。


 人間は、自分だけの力で生きている人など一人もいない。すべてのものと繋がる共感性が大切なのだろう。太陽、水、空気、地球などの自然や、動物、植物など他の生き物のお蔭で生かされているのだ。さらにすべての命の元の親ともいえるサムシング・グレートの力で生かされて生きている。そのことに思いを馳せて、祈らなくてはいけないと思う。


出典: Spirituality as a Way: The Wisdom of Japan 2021


瑞應山 蓮華院 弘明寺にて 祈り(護摩行)の実験の様子
瑞應山 蓮華院 弘明寺にて 祈り(護摩行)の実験の様子



 
 
 

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