top of page
検索

生命科学者からみた「サムシング・グレート」の世界 村上和雄 連載 ⑯

執筆者の写真: 心と遺伝子アカデミー
心と遺伝子アカデミー
2 時間前
読了時間: 3分

4章 祈りと魂


4.     今世紀は日本の出番


 歴史を振り返れば、日本は日露戦争、太平洋戦争などの誠に厳しい試練に耐え、ここまで繁栄を築いてきた。世界の世論調査(2017年)によれば、治安の良さ、科学、技術、および、教育や医療水準の高さ、経済力などを統合して、日本はベストカントリーの一つに数えられている。


 2019年、アフガニスタンで医療や用水路の建設、人道支援に尽力していた「ペシャワール会」代表の中村哲医師が、現地で銃撃されて亡くなった。現地では、ろうそくを手に集まった住民からは悲しむ声が、国内外からは追悼の声が上がった。命を使うと書いて「使命」という。中村医師の活動はすべて医療が原点だが、医師としての活動をはるかに超え、まるで与えられた使命を果たすかのように行動し続けた。彼の生き方は日本人の誇りであり、私たちの利他的遺伝子をオンにしたに違いないと思うのである。私たちが行った「僧侶の祈り」の実験結果が示すように祈りや共感性のような利他心は遺伝子をオンにするのである。


 東日本大震災に際しての冷静、秩序正しい日本人の行動に対し、各国から賞賛の声が上がった。国内ではその後も、各地で大きな災害が続発しているが、こうした試練も、お互いに助け合い、感謝の祈りを捧げるような精神を持てば、この困難は必ず乗り越えられると確信している。


 それではこのような日本人の精神や魂とは何であろうか。

日本人は本来、命の捉え方を生き物に限定していなかった。そして、魂の存在を人間に限定していない。また、「言霊」のように魂の存在を物質にさえ限定していないのである。


 かつて私が発起人となって開催した「ダライ・ラマ法王と科学者との対話」(2012, Tokyo)で、魂について討論する機会があった。仏教の第一人者であられるダライ・ラマ法王は「花には魂はない、魂は人間独自のものである」と断言された。日本も仏教国のひとつである。しかし特徴的なのは、神道と仏教やその他の宗教を同時に受け入れているところだ。日本には針供養、人形供養などの使命が終わった物を供養する習慣がある。また、動物実験をしているほとんどの施設・大学では動物慰霊祭を行う。動物の魂を供養するのである。動物慰霊祭があるのは日本の特徴であろう。古来より日本人は、目には見えない自然の力、私がサムシング・グレートと呼ぶものの存在を大切にしているのである。


 その本質をスイッチ・オンすると、この21世紀には文化大国、道義大国として、日本の出番が必ずくると思っている。そのとき、単なる日本人の心だけでなく魂の問題が大切になるのではないかと私は思う。


出典: Spirituality as a Way: The Wisdom of Japan 2021



 
 
 

コメント


bottom of page